平成16年度 学部長裁量経費
〜現職教員のための先端科学計測機器の利用アンケート結果〜
平成16年度学部長裁量経費プロジェクト研究報告
プロジェクトの課題
現職教員の再教育としての電子顕微鏡・元素分析装置を利用した理科および生活科学の素材研究
はじめに
専門知識の教育現場への還元および現場教育における教材開発への専門的支援等,大学における研究成果の社会的利用が促されている。とくに,理科教育においては,児童・生徒の自然科学への内在的嗜好が強いにも関わらず,理科離れが現実のものとなっている。この問題点を克服する手段として,教育現場における教員自身の積極的な活動を通して児童・生徒の科学への興味・関心を日ごろから鼓舞し,継続させることが重要である。そのためには,中学・高校教員が自ら大学施設を利用し,最近の科学に触れる必要もある。教育学部では平成16年度に走査型電子顕微鏡および微小・広域X線分析装置が設置された。本格的な非破壊分析装置の導入は,専門的教員ばかりでなく,上述のように現場教員の再教育の施設として利用が可能となり,日頃深化させることのできなかった教材について自ら検証し,学ぶことができる環境が準備できたといえる。このプロジェクトは,最先端の分析装置を利用し教員自身の探求心を高めるためには,受入れ機関としてどのような体制を構築すべきか,教育現場からのアンケート調査を行い次年度以降の基礎資料とするために企画されたものである。
なお,このプロジェクトは,教育学部の平成16年度の学部長裁量経費によって実施された。
プロジェクトの概要
このプロジェクトは,現職教員の再教育の一環として,研究意欲のある教員自身で最近の分析装置を利用し,教材開発を行い,そしてその開発を支援する体制を構築するものである。今年度は,装置の設置が年度末であったことから,来年度以降の本格的な支援システムの開発のための調査期間として位置づけた。そのために,(1)装置を設置した403号室の環境整備(電源,水道,ブラインドなどインフラ的なもの)を中心に行った。(2)電子顕微鏡と元素分析装置の基礎と応用を示したパンフレットと共に島根県中部と東部・鳥取県西部の中学校理科担当教諭へアンケートを依頼した。(3)電子顕微鏡と元素分析装置の維持・管理のための管理組織の設置と運用体制の整備を図った。(4)装置の維持に必要な最低限度の必須消耗品の購入を行った。
アンケートは130校へ依頼したが,69名の教員から回答をいただいた。その結果は別添に示す通りである。アンケートは理科研究室の学生とともに解析し,学生自身への問題提起になるようにもした。
研究組織
氏名 所属 専門分野
野村律夫※ 教育学部・教授 地学(地質古生物学)
曽我部国久 教育学部・教授 化学(物理化学・化学教育)
秦 明徳 教育学部・教授 理科教育(地学教育)
中村宗一郎 教育学部・教授 食品化学
秋重幸邦 教育学部・教授 物理学(物性物理学)
大谷修司 教育学部・教授 生物学(植物学)
舟木賢治 教育学部・助教授 生物学(動物学)
高橋哲也 教育学部・助教授 繊維科学
松本一郎 教育学部・助教授 地学(岩石鉱物学)
重松宏武 教育学部・助教授 物理学(物性物理学)
※プロジェクト代表
成 果
島根県東部と鳥取県西部の130校へのアンケートで,69名の理科教員から回答をいただくことができた。現職教員の多くが電子顕微鏡について興味関心をもっているものの,実際には理解が十分とは言えず,大学生のときに使った経験がほとんどなかった実態が明らかになった。生徒に生物試料をミクロ的に見せてあげることによって学習の効果が期待されると回答された先生でも,実際には約7割の先生が画像資料の不備のため授業で使われていなかった。半数以上の先生は画像資料を希望されていることも明らかとなった。
一方で,教科書に挙げられている物質や生物関係の教材・素材について,電子顕微鏡による観察を希望されている先生は,希望されない先生より若干少ない結果となった。教科書に挙げられている教材・素材には多くの場合,学習参考書などにミクロの写真が掲載されている場合が多いため,特別な観察を必要としなかったこともあるかもしれない。
素材研究のために施設の利用を考えている教員は,約半数であった。反対に,施設利用を必要としない教員も半数であり,教員の自然科学への温度差があることも明確である。希望される教員の中には具体的な素材について言及されている熱心な先生もおられた。
アンケートの内容
アンケートは次のような内容である.回答は選択式をとり,必要に応じて自由記述にした.
中学校理科学習における電子顕微鏡の利用に関するアンケート
島根大学教育学部 地学研究室
★該当する番号を○印でお願いします。
○あなたは、電子顕微鏡を使ったことがありますか。
1.ある 2.ない
○あなたは、電子顕微鏡で観察されるミクロの世界に興味を持っていますか。
1.ある 2.ない
○あなたは、電子顕微鏡に透過型電子顕微鏡と走査型電子顕微鏡があることを知っていますか。
1.知っている 2.知らない
○ミクロ的に凹凸のある物質の観察に適しているのは、透過型電子顕微鏡と走査型電子顕微鏡のどちらの顕微鏡でしょうか。
1.透過型電子顕微鏡 2.走査型電子顕微鏡
○あなたは、理科の時間に生徒に電子顕微鏡の画像(光学顕微鏡では得られない高倍率の画像として)をみせたことがありますか。
1.ある → 次へ 2.ない
その分野は何ですか。 _______________
○中学校の理科の教科書には別添の学習素材が載っています。この中のどれかをミクロ的に観察してみたいと思ったことがありますか。
1.ある → 次へ 2.ない
その素材は何ですか。 _______________
○生徒に物質をミクロ的に見せてあげることについて、学習効果があると思いますか。
1.ある → 次へ 2.ない
その分野は何ですか。 _______________
観察したい物質はなんですか。 ____________________
○今までの授業で、生徒の興味関心を引き立てるのに電子顕微鏡でみた画像がほしかったことがありますか。
1.ある 2.ない
○使用許可が得られれば、夏休み、冬休みのような期間に素材研究のために使ってみたいと思っていますか。
1.思っている 2.思っていない
また,顕微鏡を使った観察ができる素材について中学校理科の教科書を調査した.分野別では圧倒的に生物分野での利用が高い.次に地学分野で,反対に物理分野での利用は限られている(資料参照).
アンケートの結果
度数 割合(%)
項目 1 2 3 4 総数 1 2 3 4
あなたは、電子顕微鏡を使ったことがありますか。 14 55 0 0 69 20.3 79.7 0.0 0.0
あなたは、電子顕微鏡で観察されるミクロの世界に興味を持っていますか。 61 7 0 1 69 88.4 10.1 0.0 1.4
あなたは、電子顕微鏡に透過型と走査型があることを知っていますか。 34 35 0 0 69 (透過型)
49.3 (走査型)
50.7 0.0 0.0
ミクロ的に凹凸のある物質の観察に適しているのは、透過型と走査型のどちらでしょう。 2 49 10 8 69 2.9 71.0 14.5 11.6
あなたは、理科の実験に生徒に電子顕微鏡の画像を見せたことがありますか。 21 48 0 0 69 30.4 69.6 0.0 0.0
中学校の理科の教科書には別添の学習素材が載っています。この中のどれかをミクロ的に観察してみたいと思ったことがありますか? 31 34 1 3 69 44.9 49.3 1.4 4.3
生徒に物質をミクロ的に見せてあげることについて、学習効果があると思いますか。 51 12 1 5 69 73.9 17.4 1.4 7.2
今までの授業で、生徒の興味関心を引き立てるのに電子顕微鏡で見た画像がほしかったことがありますか。 39 28 0 2 69 56.5 40.6 0.0 2.9
使用許可が得られれば、夏休み、冬休みのような期間に素材研究のために使ってみたいですか。 33 33 1 2 69 47.8 47.8 1.4 2.9
1→ある
2→ない
3→その他の回答を作っている場合
4→無回答
アンケート結果への感想
島根県東部と鳥取県西部の130校へのアンケートで,69名の理科教員から回答をいただくことができた。現職教員の多くが電子顕微鏡について興味関心をもっているものの,実際には理解が十分でなかったり,大学生のときに使った経験がほとんどなかった実態が明らかになった。生徒に生物試料をミクロ的に見せてあげることによって学習の効果が期待されると回答された先生でも,実際には約7割の先生が画像資料の不備のため授業で使われていなかった。半数以上の先生は画像資料を希望されていることも明らかとなった。
一方で,教科書に挙げられている物質や生物関係の教材・素材について,電子顕微鏡による観察を希望されている先生は,希望されない先生より若干少ない結果となった。教科書に挙げられている教材・素材には多くの場合,学習参考書などにミクロの写真が掲載されている場合が多いため,特別な観察を必要としなかったこともあるかもしれない。
素材研究のために施設の利用を考えている教員は,約半数であった。反対に,施設利用を必要としない教員も半数であり,教員の自然科学への温度差があることも明確である。希望される教員の中には具体的な素材について言及されている熱心な先生もおられる。
以上,理科教員の素材・教材研究への自己意識の実態が明らかになってきた。
プロジェクトの今後の基本方針
このプロジェクトは,現職教員または研究者へ大学の施設利用を促するものであり,本学部の地域への貢献を高めることが期待される.現職教員のなかには,教科書に掲載されている資料について実際に見て触れる,そして操作する機会のなかった人も多い.このプロジェクトを通じて,現職教員の素材・教材研究への一層の意欲を高める計画を大学教員と一緒になって次年度以降も継続する必要がある。
アンケート1

アンケート2

アンケート3

アンケート4

アンケート5

アンケート6

アンケート7

アンケート8

アンケート9

教員の希望する観察素材
観察したい物質は何ですか?
○物理・化学関係
原子と分子
炭素とダイヤモンド
金属の原子
鉱物や化合物の結晶
化合・分解後の物質
金属非金属
化合物と単体
○生物・地学関係
動物の体(小動物)
植物
血液
昆虫
微小器官
生物の細胞(細胞分裂)
小腸、柔毛や微柔毛
細菌類、乳酸菌、納豆菌
葉緑体
岩石
核
内臓
生物組織
細胞微小構造
その他,何でも